セラピストが押さえておきたいこと ~ 運命共同体マイクロバイオームの重要な役割:腸内細菌編 その2 ( 短鎖脂肪酸 )

こころ・感情・からだ
(この記事は、旧サイトにて2019年10月22日に公開した内容を更新したものです)
こんばんは
こころと身体のセラピストゆうです(*^-^*)
私は人間の身体で起きていることと、自然界で起きていることはリンクしていると感じています。
今回はそのあたりからお話をすすめてゆこうと思います。

からだの生物多様性

私たちが住む地球上には、無数の細菌や真菌などの微生物たちが存在し、同様に私たちの鼻腔・目・頭・口腔皮膚・消化管・氣道・耳・脇・足の裏・膣などにも微生物がそれぞれにコミュニティをつくり暮らしています。
“ 生物多様性 ” というのを聞いたことあると思います。
環境省HP 【みんなで学ぶ、みんなで守る生物多様性】 によると生物多様性とは、
『 生物多様性とは、生きものたちの豊かな個性とつながりのこと。地球上の生きものは40億年という長い歴史の中で、さまざまな環境に適応して進化し、3,000万種ともいわれる多様な生きものが生まれました。
これらの生命は一つひとつに個性があり、全て直接に、間接的に支えあって生きています。
生物多様性条約では、生態系の多様性・種の多様性・遺伝子の多様性という3つのレベルで多様性があるとしています。 』
とあります。
自然界でも生物多様性が保たれることで、それぞれの個性が生かされ支えあいながら調和を保っているのと同様に、私たちの身体にも様々な微生物たちが暮らしています。
同じ地球上でも、島や大陸に住む人間の種族がそれぞれにあり、氣候風土が違う国や州などの中にコミュニティが築かれていて、微生物の世界も人間の世界もやはり同じなのかなと感じています。

人間は微生物たちにとっての地球

私たちと共存する微生物にとって人間のからだは、地球みたいなもんなのだなと。 頭(あたま)合衆国とか、口の中共和国とか、お尻大陸とかいろいろ考えると面白いです。
そんな人間地球号に棲んでいる微生物たちですが、特に体内への入り口となる腸管内の微生物は、単にそこに棲んでいるのではありません。
私たちにとって欠かせない、ビタミンKやビタミンB、葉酸をつくるほか、腸内細菌の働きでも重要な仕事の1つと言われている “短鎖脂肪酸” などをつくり出し、私たちに提供してくれているというなくてはならない存在です。
( イラストAC )
この微生物が最も多く暮らしているのが腸管内です。
以前にも紹介したように、腸というのは体内の入り口でもあるため、異物や病原菌が侵入してこないように防御機能をビッチリと張り巡らせているところです。
ただ、必要なものは摂り入れなくてはならないし、私たちにとって重要な働きをしてくれている腸内細菌たちも排除されてしまっては健康維持は難しくなってしまいます。
では、この関係を維持するにはどんなシステムが身体に備わっているのでしょうか。

身体の内側と外側を隔てるもの

私たちの身体のあちらこちらに配備されている粘膜組織は、身体の内と外とを隔てるバリケードを形成しています。
そして、熱や乾燥などの様々な刺激から身体を守り、有害なものを排除するバリア機能を果たしているのです。
腸管内は食べ物に含まれる栄養成分以外にも、一緒に流れ込んでくる消化酵素や細菌などの微生物のほか、抗原などにもさらされています。
その状況にうまく対応するために、粘膜の表面を厚い粘液層で覆いバリアとして機能しています。
腸管の上皮を覆う粘液層には粘液密度の高い内層と、低密度で粘性が高い外層の2層があり、内層では病原菌の細胞への侵入を防御し、外層は常在菌と接触しているため腸内細菌に定着の場を提供しているのではと考えられています。
この腸管上皮を覆う粘膜バリア機能に何らかの異常が生じると、腸内細菌にも免疫反応が起こりやすくなってしまい、腸管の炎症が起こり腸内細菌叢の乱れを起こすことも分かっています。

腸内細菌がつくる “短鎖脂肪酸” は炭水化物が原料

自然界でも私たち人間の身体でも、菌の多様性が重要であるというのは上記でお伝えしました。
私たちの腸内の常在菌は善玉菌・悪玉菌と、どっちつかずの日和見菌で構成されています。
人間の都合で善玉菌・悪玉菌と振り分けられていますが、どの菌がいい悪いということではなく、皆必要だから存在しているのであって、大切なのは腸内細菌全体を見たときに、その菌たちがどういった働きをしてくれているのかということです。
腸内細菌による重要な働きの1つに“短鎖肪酸”をつくるという働きがあります。
炭水化物には、体内で分泌される消化酵素で消化できる“易消化性炭水化物”と、オリゴ糖や食物繊維など、そのままでは消化できない“難消化炭水化物”があります。
この“易消化性炭水化物”を腸内細菌が分解・醗酵し、短鎖脂肪酸である酢酸や酪酸・プロピオン酸などを作りでしてくれるのです。

短鎖脂肪酸のはたらき

腸内細菌がつくり出す短鎖脂肪酸のありがたいはたらきには、
✶腸内をpHを下げ適度な酸性状態にしてくれて善玉菌を元気に、悪玉菌を退治・増殖を抑える
✶粘膜バリア機能を高めるとともに、様々な疾患の原因となる炎症を抑制
✶過剰な免疫反応にはたらきアレルギー反応を抑制
✶大腸の粘膜にあるセンサーにはたらきかけ腸の蠕動運動を促進
✶免疫機能活性
などがあげられます。
ただ、残念なことに、戦後になって高脂肪食、動物性食品の摂取が増えるにしたがって、日本人の食物繊維や醗酵食品の摂取量も激減しているのが現状です。

腸内環境を悪化させる悪習慣

前回も紹介しましたが農薬などの薬品の使用量の増加や、私たちが口にする食品全般に使用される添加物や防腐剤(ということは殺菌作用があるということです)、食される動物育成時に使用される抗生物質やホルモン剤なども合わせて腸に送り込まれてくる状況を考えたら、どれだけ腸にストレスがかかっているか想像できると思います。
現代の食されるもの・生産されるものの現状を考えると、そういった商品を全く摂らないというのはなかなか難しいところだと思います。
ですので、こういった知識を少しずつ増やしながら、何を減らし何を選択し体内に摂り入れるのか・・・。
結局、生産側も売れるから販売するのであって、結果マイナスのサイクルを生み出してしまうので、私たち一人ひとりが賢くなって選択してゆく必要があるということです。

最後に

特に、これから妊娠・出産を考えている女性に関しては、妊娠中のママの腸内環境はもろに生まれてくるベビ、ちゃんに引き継がれることになりますから、その辺りをよくよく考えて選択していただきたいと思います。
最後に “あなたの食生活が腸の健康にどのように影響するか” について語っている、胃腸科医師のシルパ・ラヴェラ博士の動画をご覧ください。

 

 

・・・・・・・・・・・・・

◆ 参考書籍・参考HP
・もう一つの臓器―腸内細菌叢の機能に迫る
https://katosei.jsbba.or.jp/download_pdf.php?aid=225
・腸内細菌脂質代謝産物に見いだされた腸管バリア保護機能
腸内細菌脂質代謝産物に見いだされた腸管バリア保護機能
・AASJ
http://aasj.jp/news/watch/10105
・太陽化学株式会社
https://www.taiyokagaku.com/lab/health/phgg_pickup05/
・腸内細菌学会
https://bifidus-fund.jp/keyword/kw013.shtml
・ヤクルト中央研究所
https://institute.yakult.co.jp/dictionary/word_3163.php
・エイジレスライフ
https://nestle.jp/agelesslife/topics/015.html
・武田薬報web
腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸のちから~注目される酪酸菌~|からだ健康サイエンス
最近では腸内細菌の研究が進み、肥満やアレ...

 

コメント