セラピストが押さえておきたいこと ~ 運命共同体マイクロバイオームの重要な役割:腸内細菌編 その1

いのちの循環

(この記事は、旧サイトにて2019年10月12日に公開した内容を更新したものです)

こんばんは
こころと身体のセラピストゆうです (*^-^*)
さて、これまで 運命共同体マイクロバイオーム(細菌叢)の重要な役割 ~ 口腔編 皮膚編  では、お口の中や皮膚に生息する微生物を紹介しました。
口腔編・皮膚編でも紹介したように、全身のいたるところに微生物たちがコミュニティをつくり、我々人間をいろんなものから守ってくれたり、私たちに必要なものをつくりだし提供してくれています。
この微生物たちは、どのようにして私たちの身体の居住者になったのでしょうか?
では、早速見てゆきましょう。

微生物たちはどこからやってくるの?

私たちが胎児の時は無菌状態であると言われていて、出産時、お母さんの産道を通る際や、この世に生まれ出てから看護師さん或いは助産師さんやお医者様たちから。
或いは、祝いに駆け付けた親族、一緒に住んでいるペットや、ベッドやシーツ・タオルなどにいる微生物などなど、母体内にはなかった環境に触れることで色んな菌と触れ微生物叢が形成されてゆきます。
そして、お母さんの母乳を飲んだ際に唾液と混ざり、お乳の中に含まれるオリゴ糖を分解して栄養源とするビフィズス菌が増えてゆき、赤ちゃんの腸内環境は酸性になることで感染から守られるという仕組みになっているのです。

腸内細菌がもたらすもの

その後の成長過程からも様々な種類の細菌を取り込みながら、腸内に棲むことになる色んな種類の微生物たちは、消化や吸収という仕事をこなしつつ、免疫系や神経系のはたらきなどとも密に関わりあいながら、私たちの健康や美容、こころのバランスなどにも影響を与えているということが近年明らかになってきています。
というのも、これまでは職人技が必要だった微生物の培養技術が、DNAシークエンサー https://www.megabank.tohoku.ac.jp/genome/archives/447)という遺伝子の詳しい情報を解読できる技術が登場することによって、微生物全体がもつ膨大な遺伝子情報の解析を可能にし、どんな菌がどれくらいいて、どんな働きをしているのかなどが探索できるようになったのです。
そして、私たちの腸内には1000種類以上、100兆個の微生物が生息していると言われていて、それぞれがバランスを保ちながら共存して腸内で暮らしています。
近年では、この腸内細菌のバランスが何らかの刺激や影響により崩れると、もともと私たちに備わっている恒常性維持機能(ホメオスターシス)にも影響することが分かってきていて、炎症性の腸疾患、動脈硬化、糖尿病、自閉症、パーキンソン病、肥満、アレルギーなどさまざまな疾患との関係性も明らかになってきています。

消化管で暮らす微生物たち

では、私たちの消化管には主にどのような微生物が暮らしているかというと・・・
胃酸のはたらきにより㏗2の強酸性の状態に保たれている胃は、ほとんどの微生物は生息できません
そんな中、ほとんどの成人の胃の中にはピロリ菌が暮らしています。
小腸の上部には、胆汁酸や膵液の影響でやはり菌の数は少なく、乳酸桿菌やレンサ球菌、ベイロネラ菌などがひっそりと暮らしていて、小腸の下部へ行くほど菌の種類や数が増えてゆきます。
そして、大腸まで来ると急激に菌の種類や数が増え無数の微生物たちが暮らしていて、多くの場合、大腸内に生息する菌は、酸素を必要としないバクテロイデスやビフィドバクテリウムなどの嫌気性菌です。

増え続けている炎症性腸疾患

私たちの腸管粘膜の表面積は、なんとテニスコート1.5面分と言われています。
腸を含む消化管は、内なる外と言われていて、身体の内側に臓器は納まっていますが、実際に『 体内 』 と表現するのは、腸管から血液中に取り込まれた状態です。
ですので 『 体内 』への入り口は、腸ということになります。
このだだっ広い腸管粘膜から色んなものが侵入出来てしまうので、腸管には約80%もの免疫機能を集中させ、異物の侵入や感染の危険から守って いるのです。
なのですが、1980年代から爆発的に増え続けているのが “ 炎症性腸疾患 ” です。
2014年度のデータでは、潰瘍性大腸炎クローン病など難病指定されている炎症性腸疾患の患者数は、なんと22万人を超えています。
いったい私たちの身体の中で何が起こっているのでしょうか?

便利がもたらしたもの代償

高度経済成長期の1960年~1970年代にかけて、衛生環境や抗生物質の使用、高脂肪食や動物性食品の過剰摂取など食の欧米化、低食物繊維食、食品添加物や農薬のなどの薬物の使用量の急激な増加・・・などなど。
経済発展に伴って、私たちの運命共同体である腸内微生物たちは、いうなれば毎日毎日、虐待に近い状態にさらされ続けているといえます。
こういった社会環境・食環境の変化により腸内細菌叢は相当なダメージを受けており、炎症性腸疾患やその他さまざまな疾患発症増加の一因になっていると考えられていて、ここ数年の間で研究も進んでいるといいます。
普段普通に生活していると、オーガニックや無農薬のものしかとらないしすべて手作り、外食などもしないというようによっぽど徹底していない限り、食品添加物や諸々の薬品は体内に入ってきてしまう環境です。

抗生物質・ホルモン剤? 服用していませんが・・・

恐ろしいことに、食品添加物の一人当たりの年間摂取量は、5キロとも10キロとも言われています。
一度に摂取すれば、間違いなくいのちを失うことになるでしょう。
一応、添加物といえどもどのレベルでOKを出しているかは疑問ですが…。
単体での安全性や認可はおりているとはいえ、私たちが日々摂取しているのは1種類とか2種類とかそんな甘い世界ではなく、数えきれないくらいの添加物の組み合わせが体内に放り込まれている訳で、その安全性というのは検証されてはいないのが恐ろしいところです。
そして、見落としがちなのは、ご自身が抗生物質などを服用していなくとも、牛さん、豚さん、鶏さん、養殖のお魚さんたちからいただく殆どの動物性のものは、成長剤などのホルモン剤や抗生物質にまみれているので、動物性のものをいただく機会の多い方は、多かれ少なかれその恩恵を受けることになるでしょう。
そして、それを食した人間が排泄したものはどこに行きつくのか。。
現在の食のシステム全体を見直していかなくてはならない問題なのではないかと感じています。

最後に

最後に、進化生物学者ケイティー・ハインド博士の『私たちが母乳についてまだ知らないこと』を紹介します。
母乳について、女性である私たち自身がしっかりと知識を身に付けておくこと。
特にこれから母となる準備をされている方は、是非ご覧ください。

 

◆ 参考書籍・サイト・・・・・・・・・

◆腸内細菌はさまざまな疾患発症に関連している: http://www.saitama-med.ac.jp/jsms/vol43/01/jsms43_007_008.pdf

◆IBD および IBS における腸内細菌の関与:  https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/1/104_35/_pdf
◆Bio&Anthropos: https://www.bio-anthropos.com/
◆炎症性腸疾患における消化管ウイルス叢の解析: https://www.mishima-kaiun.or.jp/assist/docs/SNo27-iida.pdf
◆ヒト腸内ミクロビオータの関与が疑われる話題の疾患: http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1412_02.pdf
◆腸内細菌叢由来代謝物質がもたらす生体恒常性と疾患:  https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2019.910065/index.html
◆粘膜バリアによる腸内細菌と腸管上皮の分離: https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890731/data/index.html
◆国際粘膜ワクチン開発センター 粘膜バリア学分野: http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/dmb/research.html
◆ ヒトマイクロバイオーム研究: https://www.medience.co.jp/forum/pdf/2018_01.pdf

◆ ヒトマイクロバイオームの解析手法論( 理化学研究所 ): https://www.osaka-med.ac.jp/omics-health/v9oak00000005kvy-att/180702_symposium_suda.pdf

◆ イルミナ: ヒトマイクロバイオーム解析: https://jp.illumina.com/areas-of-interest/microbiology/human-microbiome-analysis.html

◆ 目に見えないヒト常在菌叢のネットワークをのぞく:http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/049/html/1110490301.html

◆ 感染症の管理A. 細菌の分類: http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/picu/infection/inf-a.html

◆ 口腔細菌が及ぼす全身への影響:http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/2017_08/001.pdf

◆ 口腔フローラと全身の健康: http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/jibiinkoka/enge/data/mt04/04b/20140903b.pdf
◆ 口腔内細菌の全身疾患への関わり:http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-120725.pdf
◆ 口腔感染症とは: http://www2.dent.nihon-u.ac.jp/g.microbiology/oral_infection/index.html

◆ 口腔内細菌コントロールによる: file:///C:/Users/U/Downloads/3-2_27.pdf

◆ 細菌の分類: http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/picu/infection/inf-a.html

◆ 病院感染を起こす代表 的な微生物(感染経路と病原性):

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