セラピストが押さえておきたいこと ~ 運命共同体 マイクロバイオーム(細菌叢)の重要な役割・口腔編

セラピストが押さえておきたいこと
(この記事は、旧サイトにて2019年10月12日に公開した内容を更新したものです)
こんばんは
こころと身体のセラピストゆうです。
今回は、私たちにとって重要な役割をはたしてくれている運命共同体である マイクロバイオーム(細菌叢)口腔編  をテーマにお伝えしてまいります。

生物多様性とは

微生物たちの存在や役割などの理解を深めるごとに、私は 生物多様性 の重要性というのをひしひしと感じるとともに、こういった目に見えない存在やあらゆるいのちの関わり合いの中で私たち人間は生かされているのだなということを実感するのです。
地球環境の保全活動をされているWWFのサイトでは、
『 地球上の生命、その中には、ヒトも含まれれば、トラやパンダもおり、イネやコムギ、大腸菌、さまざまなバクテリアまで、多様な姿の生物が含まれています。
これらの生きものはどれを取ってみても、自分一人、ただ一種だけで生きていくことはできません。
多くの生命は他のたくさんの生物と直接かかわり、初めて生きていくことができるのです。
このかかわりをたどっていけば、地球上に生きている生きものたちが、全て直接に、間接的につながり合い、壮大な生命の環を織り成していることが分かります。
この、生きもののつながりを、私たちは「生物多様性」と呼んでいます。
それは、この地球という一つの環境そのものであり、そこに息づく生命の全てを意味する言葉に他なりません。』
とあります。
私は、人間の身体で起きている事と、自然界で起きている様々なことはリンクしているということ、私たちの身体でも営まれているのも生物多様性であるのだなというのを感じます。
ちょっと話がそれてしまいましたが、そんな視点で見ていただくと色んな繋がりや、自分が普段使っている商品などの選び方なども変わってくるのではないかなと思います。
ではでは、今回のテーマである “ 口腔内の微生物たち ” について学んでゆきましょう。

唾液のすごい役割

私たちのお口の中には、免疫組織でもある粘膜があり唾液が分泌されていて、その中で微生物が存在し生活しており、口腔内にはおよそ700種の微生物が生息していることが分かっています。

私たちが普段食事をすることで、食べ物自体の酸であったり、口腔内の細菌が出す酸によってお口の中が酸性に傾いてしまいす。

 

お口は沢山の病原菌の入り口

口腔は、多くの病原菌の侵入口となっている部分ですが、唾液に含まれる重炭酸イオンによってpH7前後(中性)になるように調節されています。

そして、口腔内には常在細菌叢が形成されていることから、病原菌が排除されるので多くの病原菌は定着することができません。

唾液は口の中をまんべんなく潤すことで、口の中が汚れることを防いでいて、夜間は唾液分泌が減少傾向となります。

口臭の原因は唾液量の減少が原因?!

朝目が覚めた直後に口の中に粘つきを感じたり、口臭が氣になるのは唾液分泌量が減少するためで、口の中の微生物が増加している証拠です。
また、唾液は虫歯の原因となるミュータンス菌の増加を抑え、ミュータンス菌が出した酸を洗い流すと共に中和するという役割もあります。

ただ、ストレスや疾患・抗生物質など薬の服用・口呼吸・加齢・不規則な生活などにより、唾液の分泌不足が生じ、唾液が本来果たしている自浄作用が働かず、口臭や口内炎、虫歯や歯周病などにかかりやすくなる場合もあります。

このように、お口の中の常在菌たちに元氣に過ごしてもらうためには、唾液の分泌量も非常に重要となるポイントです。

◆ 唾液について書いた記事 ➡ 消化吸収のはなし②・口腔編その2(唾液について)

 

お口常在菌の重要な役割

お口の中の常在菌は、歯の表面・歯肉の溝・舌・咽頭・唾液・頬粘膜などに棲んでいますが、口腔内の細菌叢の正常な防御機能が保たれている間は、口腔と細菌叢との間では良好な共生関係を維持することが出来るのです。
ただ、近年では腸内細菌叢だけではなく、お口の中の細菌叢の崩れも起こっており、 通常ではあまり見られない微生物が検出されるように なってきていて、う蝕(虫歯)と歯周病(国民の80%以上が感染)は口腔内の二大疾患と言われています。
そして、歯周病などの口腔感染症( 病原性微生物によって引き起こされる感染症のこと )が糖尿病や動脈硬化、自己免疫疾患、心臓血管障害、腎臓病や肥満などの全身疾患の誘因となることが明らかになってきています。

常在菌と共生できる期間が寿命?!

現代では「 常在菌と共生できる期間が寿命 」といわれています。
それを最も良く現しているのが口腔感染症で、これらの視点から口腔内細菌、口腔感染症、そして口腔感染症を誘因とする全身疾患を見ると常在菌と生体との関係がみえてくるのです。
その背景として知っておくことは
① 口腔感染症は常在細菌による内因性の感染症で、主な原因は宿主側にあること。
② 生体防御能の主役である免疫担当細胞は、血液により口腔組織内を含む体内を循環する。
③ 口腔は消化器官の一部であり、健康と免疫機能維持に重要な食物は全て口腔から摂取されること。

お口の情報は全身に伝わり健康を左右する

多くの研究から、細菌学的にも免疫学的にも、「口腔の情報は全身に伝わり、全身の情報は口腔に伝わる」ことが証明されている。
つまり、口腔の健康状態は全身の健康状態と免疫年齢を如実に表していることを意味している。
とあるように、腸内細菌同様、お口の中の微生物たちの調和 = 私たちの心身の健康に繋がっているということです。
では続いて、口の中にはどんな微生物たちが棲んでいるのか見てゆきましょう。

胎児の時は無菌状態?!

これまで見てきたように、私たちの身体のいたるところに微生物が生息しているのですが、胎児の時期は無菌状態で過ごしているといいます。

ではどうやって、微生物たちと出会うのでしょうか?

一番最初に出会うのは、赤ちゃんがお母さんの産道からこの世に生まれ出るときなんです。

お母さんの膣や外陰部の微生物に触れ、大腸菌や腸球菌を受け取り、出産後数時間で最初の腸管内の常在菌の定着がスタートすることが分かっています。

その後、様々な人や動物、食べものや物、場所に存在する微生物たちに触れながら身体全体の微生物叢が形成されてゆくのです。

 

お口の中の微生物たち

お口の中の微生物も同様に、授乳期、離乳食期、普通食期に移行するにつれ変動してゆきます。

健康な人のお口の中では歯肉縁には、主にグラム陽性菌(ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌など)と、桿菌(かんきん・円筒状の細菌や古菌)が棲みついていて、お互いに共生し拮抗しながら調和を保って生活をしています。

こころや身体の健康状態がバランスされている時は、病原性を持った菌の働きは抑えられています。

ただ、それが何らかの原因でバランスが崩れてしまうと、口腔内の一部の菌が多く繁殖し虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎の原因になったりするのです。

 

お口の中にトラブルがある人の微生物の種類

歯周病などトラブルのある人の歯肉縁には、 グラム陰性嫌氣菌 (酸素をあまり必要としない)が増加していて、色んな種類の細菌たちがを寄り集まって歯垢(プラーク=細菌の塊)となります。

こうして、細菌たちが生活しやすい環境が整い、病原性のプラークとなってしまいます。

お口の中に食べかすや磨き残しなどがあると、それを栄養源とする微生物の塊が歯垢となり、食後8時間程度で歯垢は形成されます。

そして、できあがった歯垢が、唾液に含まれるカルシウムやリンと反応して石灰化すると頑固な 歯石 になってしまうのです。

 

虫歯の原因菌

そして、虫歯( う蝕 )の原因となる代表的な細菌は、ミュータンスレンサ球菌通性嫌氣性グラム陽性菌です。

その他、乳酸桿菌のラクトバチルス、放線菌のアクチノマイセス・ビスコーサスも虫歯を引き起こす原因菌です。

このレンサ球菌属は、酸素があれば呼吸でエネルギーをつくり、酸素がなくても乳酸発酵によってエネルギーをつくることが出来ます。

お口の中の虫歯菌が、ショ糖(砂糖)を栄養源とし、歯の表面にネバネバした物質(グルカン)をつくります。

このネバネバした物質の中に、虫歯菌や他の細菌が棲みつき増殖し塊となり、歯垢(プラーク)が虫歯の原因となります。

歯垢の中の細菌は、食べ物の中の「糖質」を材料に酸をつくり歯のエナメル質を溶かし虫歯をつくります。

 

お口の中のヌメヌメの正体

その正体は、バイオフィルムです。

バイオフィルムとは、細菌などの微生物たちが分泌した物質で、身近なところでは排水溝や台所などで見受けられるヌメリのことです。

自然界のあらゆるところにも存在していて、微生物たちがくっつけるところとお水があればどこでも生息することが出来ます。

私たちが食事で摂取する 炭水化物・蛋白質・糖質・脂質  などがお口の中に入ってくると、細菌がそれらを分解し栄養源として代謝する際に酸を放出し、お口の中のpHを低下させます。

健康な歯肉縁では、バイオフィルムの75%が常在菌(グラム陽性好気性球桿菌)で、歯周病の病原性はない状態です。

ただ、歯周炎のある歯肉縁では グラム陰性嫌気性球桿菌 が75%を占めています。

 

バイオフィルムが歯周病の原因に

さまざまな条件が重なり、お口の中の㏗の低下が起きたり磨き残しなどがあると、細菌が歯の表面でバイオフィルムという非常に頑丈な膜を形成します。

そして、困ったことに通常の歯磨きやでは除去できず、洗口剤や抗生物質もなども寄せ付けないという頑強なシールドです。

このバイオフィルム内は、悪玉菌(グラム陰性桿菌)や内毒素=LPS(lipopolysaccharide,リポ多糖)などで満たされ、毒性は強化されて口腔内へ放出されます。( 引用:ふかさわ歯科クリニック

歯と歯肉の間にもバイオフィルムができ、そこに歯石が形成されると歯周病の原因となるのです。

 

お口の中の生物多様性が崩れる原因とは

もともと、私たちの身体だけでなく自然界や宇宙全体には、必要なものはすべてそろっていて、その中の調和が保たれています。

身体の場合、ストレスや疲れ、食生活や生活習慣の乱れ、病氣や薬の服用、睡眠不足などなどが原因となり、私たちにもともと備わっている調和の状態へと戻す恒常性というはたらきが機能しなくなってしまうのです。

お口の中に棲む微生物たちも、私たちがこの世に生まれてから必要があって私たち一人ひとりと運命を共にしてくれている仲間であり、色んなありがたい役割をこなしてくれている存在であるということ。

この微生物たちが原因で、私たちの心身にアンバランスが生じたのであれば、それは微生物たちが調和の中で暮らしにくい環境をつくった私たち人間が原因であるということです。

 

最後に

身体で起きていることは、自然界でも起きているということ。

今、私たち人間に起こっているこころや身体の不調も、いま世界中のあちこちで起きている自然災害も、そういったアンバランスをお知らせするメッセージであり、調和された状態へと戻るために必要な過程であるということなのではないかと思うのです。

本当の意味でこころや身体が喜ぶことと、自然界に存在するものすべて、そして微生物たちが喜ぶことは同じなのではないかなと思うのは私だけでしょうか。

 

 

 

 

 

 

おまけ

≪ おすすめ万能酵母くん ≫

歯磨き粉に関しても、出来るだけ口腔内の微生物たちにストレスを与えないものを選びたいものです。

前回も紹介した万能酵母くんは、使用者のレビューをみると本当に万能で、最近私も飲み物に数滴入れたり、化粧水をつける際にも使用しています。

そして最近、いいかもと思うのが、歯磨き時に酵母くんを使用するもの。

通常の歯磨きが終わった後の仕上げのような感じで、酵母くんを歯ブラシに数滴たらし全体をブラッシング。

歯肉の腫れなどにも良いみたいで、歯茎も以前より引き締まってきました。

おすすめです !

 

◆ 参考図書・引用サイト・・・・・・・・・

◆ ヒトマイクロバイオーム研究:https://www.medience.co.jp/forum/pdf/2018_01.pdf

◆ 皮膚常在菌層の包括的理解に向けて:https://gakkai.sfc.keio.ac.jp/publication_pdf/SFC-SWP_2015-009.pdf

◆ ヒトマイクロバイオームの解析手法論( 理化学研究所 ):https://www.osaka-med.ac.jp/omics-health/v9oak00000005kvy-att/180702_symposium_suda.pdf

◆ イルミナ: ヒトマイクロバイオーム解析:https://jp.illumina.com/areas-of-interest/microbiology/human-microbiome-analysis.html

◆ 目に見えないヒト常在菌叢のネットワークをのぞく:http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/049/html/1110490301.html

◆ マルホ皮膚科セミナー:アトピー性皮膚炎における皮膚細菌叢の関与:http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-180104.pdf

◆ 感染症の管理A. 細菌の分類:http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/picu/infection/inf-a.html

◆ 口腔細菌が及ぼす全身への影響:http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/2017_08/001.pdf

◆ 口腔内細菌の全身疾患への関わり:http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-120725.pdf

◆ 吉田歯科口腔外科:http://www.ydos.com/mouth/n01.html

◆ 口腔内細菌コントロールによる:file:///C:/Users/U/Downloads/3-2_27.pdf

◆ 細菌の分類:http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/picu/infection/inf-a.html

 

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